01 展覧会について
2002年9月6日に開館したポーラ美術館は、開館以来、ポーラ創業家二代目の鈴木常司(1930-2000)が戦後約40年をかけて収集したコレクションを公開し、これを基盤としてさまざまな企画展を開催してきました。
2012年の開館10周年を機に、当館は森の遊歩道の整備と開放、野外彫刻の設置、現代美術ギャラリーの開設、体験型の展示の開催、ラーニング・プログラムの実施など、その活動を広げてきました。また、近年では従来のコレクションに加えて、20世紀から現代までの美術の展開を跡づけるために重要な作品の収集を行っています。本展覧会は、鈴木常司が収集したコレクションと、近年新収蔵した作品を合わせて紹介する初の機会となります。
本展を企画するにあたり、主要なテーマを「光」としました。「光」をテーマとした現代の美術作品を収集・公開していくことは、印象派の絵画をコレクションの重要な起点のひとつに据えるポーラ美術館にとって大切なミッションです。クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちは光の表現を追究していますが、ゲルハルト・リヒターやケリス・ウィン・エヴァンスなどの現代の作家たちの作品にも、光への強い関心をうかがうことができます。彼らの作品に表れる「光」とは、単に造形的な意味だけでなく、現在を照らし出す「光」、あるいは私たちが持続可能な未来へと進むための道標となる「光」という意味も内包していると言えるでしょう。コロナ禍や緊迫する国際情勢により暗雲が立ち込める現代の状況の中で、作品からほとばしるエネルギーと勢い、そして明るい「光」は、多くの人に前進する勇気を与えるきっかけになるのではないでしょうか。本展覧会では、ポーラ美術館のコレクションの「現在(いま)」をご紹介するとともに、美術館の未来とコレクションの可能性を探ります。
02 みどころ
鈴木常司のコレクションは西洋・日本とも19-20世紀の近代絵画が中心となっていますが、新収蔵作品はこれを拡充するものと、従来のコレクションにない、近代と現代をつなぐ戦後の日本や欧米の絵画、そして同時代の作家たちの作品であり、そのほとんどが初公開となります。
本展覧会は、鈴木常司のコレクションと新収蔵作品を組み合わせた第1部と、従来のコレクションには含まれていない、近代と現代を結ぶ作家たちの作品を紹介する第2部とで構成されています。特に第2部では初めて収蔵する作家の名品が多数含まれており、コレクションの新たな展開が明確にわかる内容となっています。
本展覧会では、従来のコレクションと新収蔵のコレクションをできるだけ多くご覧いただくために、館内の5つの展示室、2017年に新設された現代美術を展示するアトリウム ギャラリー、ロビー空間、森の遊歩道にいたるまで作品を展示します。ポーラ美術館開館以来、最大規模となる超大型企画となります。
「箱根の自然と美術の共生」を設立のコンセプトとするポーラ美術館にとって、「光」は建築や照明デザイン、そしてコレクションの重要なテーマです。移ろう光を絵画に描き留めようとしたモネやルノワールら19世紀の印象派の画家たちの作品から、シャイン(光=仮象)を表現し続けるゲルハルト・リヒター、光の色そのものを写し撮る作品を展開する杉本博司、ネオン管を用いたケリス・ウィン・エヴァンスの作品まで、印象派から現代までの「光」にまつわる作品を数多くご紹介します。
03 展覧会構成
展覧会の第1部では、鈴木常司が収集したコレクションと、これをさらに拡充する新収蔵作品を、テーマや時代、作家ごとに組み合わせてご紹介します。例として、鈴木常司のコレクションの中心となる印象派絵画では、女性像(ルノワール、レジェ、ロベール・ドローネー他)、水辺の風景(モネ、ニコラ・ド・スタール他)、静物(セザンヌ、ベン・ニコルソン他)、マティスとフォーヴィスムなどテーマ別に展示します。日本の近代洋画では、時代や流派、作家ごとに展示します。例として大正の洋画(岸田劉生、村山槐多、関根正二)や日本のフォーヴ(里見勝蔵、佐伯祐三他)、その他、レオナール・フジタ(藤田嗣治)や松本竣介、坂本繁二郎など、作家ごとにご覧いただきます。
展覧会の第2部では、従来のコレクションには含まれていない、近代と現代を結ぶ作家たちの作品をご紹介します。とりわけ重要なのは、山口長男、山田正亮、猪熊弦一郎らの戦後日本の抽象絵画、ジャン・デュビュッフェ、斎藤義重、白髪一雄、中西夏之らマティエール(材質感)を探究した画家たち、そしてモーリス・ルイスやヘレン・フランケンサーラー、ゲルハルト・リヒターら欧米の作家たちによる抽象絵画です。その他にもアニッシュ・カプーア、中林忠良、杉本博司、三島喜美代、ケリス・ウィン・エヴァンス、ロニ・ホーン、スーザン・フィリップスなど現在も精力的に活動する多様な作家たちの作品も含まれており、ポーラ美術館の新しいコレクションのありようをご覧いただきます。
04 関連プログラム
本展の開催を記念して、7月23日(土)に進行役にアートテラー・とに~氏、ゲストにアーティゾン美術館の新畑泰秀氏をお招きしてトークイベントを開催します。
※なお、新型コロナウイルスの感染拡大の状況により、イベントの中止・変更の場合がございます。
ポーラ美術館の新ビジョン「心をゆさぶる美術館」にちなんだ投票企画。7月15日(金)~8月17日(水)まで、本展の出品作品から「心ゆさぶられた部門」「これなんだ部門」「ほっこり部門」の3部門で投票を行います。
05 展覧会情報
ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に
From Monet to Richter: Focus on New Acquisitions― Pola Museum of Art 20th Anniversary Exhibition
- 会期
2022年4月9日(土)~ 9月6日(火) 会期中無休
- 会場
ポーラ美術館 展示室1‐5、 アトリウム ギャラリー、 アトリウム ロビー、 森の遊歩道
- 開催
公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
- おもな作家
< 第1部 コレクション+新収蔵作品 >
ベルト・モリゾ、クロード・モネ、ピエール・オーギュスト・ルノワール、ロベール・ドローネー、ニコラ・ド・スタール、フェルナン・レジェ、ベン・ニコルソン、アンリ・マティス、レオナール・フジタ(藤田嗣治)、関根正二、松本竣介、里見勝蔵
< 第2部 新収蔵作品 >
ヴィルヘルム・ハマスホイ、ジャン・デュビュッフェ、モーリス・ルイス、ドナルド・ジャッド、 ヘレン・フランケンサーラー、パット・ステア、ゲルハルト・リヒター、アニッシュ・カプーア、ケリス・ウィン・エヴァンス、ロニ・ホーン、スーザン・フィリップス、山口長男、山田正亮、難波田龍起、猪熊弦一郎、斎藤義重、白髪一雄、李禹煥 、田中敦子、中西夏之、中林忠良、杉本博司、三島喜美代