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レオナール・フジタと旅/中南米の旅の記録
1931年11月、妻マドレーヌとともにブラジルのリオデジャネイロに到着したフジタは、商業都市サンパウロや「小巴里」と称されたアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでの滞在を経て、翌年7月に南米中央に位置するボリビアの都市ラパス、そしてペルーの首都リマに足を踏み入れました。途中、標高3,800メートルにある自然豊かな「チチカカ湖」を汽船で渡り、マチュピチュの遺跡では神秘的な風景に心を奪われた、とのちに彼は語っています。
10月にペルーを発つと、エクアドルの都市マンタ、パナマ運河、キューバの首都ハバナを経て、11月下旬にメキシコに到着しました。メキシコには8カ月滞在し、その間にタスコで美術学校の校長をしていた画家の北川民次とも出会っています。
フジタは訪れた国々の歴史や風俗、生活用具、家屋などに関心を寄せ、仮面や土偶、玩具などを買い集めました。彼の収集品の中には入手した地名が書き込まれているものがあり、中南米の長い旅を跡付けています。