箱根の森にとけこむ、建築デザイン。

森の木々を越えないよう、高さを8mに抑える。地形や水流を徹底的に調査し、設計図に落としこむ。植物生態系への影響を限りなくゼロにする…。ポーラ美術館は、自然と美術の共生を追求した建築です。館内にも、光と緑をたっぷりと感じる空間を。すべての展示室の光は、緻密に計算されています。作品を美しく見せるために、優しく守るために。まるで森の中で、美を楽しんでいる。そんなひとときを、目指しました。

01自然とひとつになる、テクノロジー建築へ。

建築設計は、箱根の自然を知ることから始まりました。広大な敷地内の動植物や地形、水流などを徹底的に調査し、設計図に落としこんでいきました。その結果、この土地の植物生態系を損なわない、自然への影響がいちばん少ない、現在の建築に辿りついたのです。当館は、建物のほとんどが地下に埋まっています。木々を越えないように地上8mの高さに抑える。森にとけこみ、一体となる。ゆるやかな傾斜地に直径74mの円形壕を掘り、免震ゴムを設置。安全免震構造によって、建築を浮かせ、人と美術品を地震や高湿度から守ります。円形壕は、地下の水脈を守りながら、土の圧力に対する安全性も確保します。建物の全部位にアクセスできる、永久メンテナンス構造です。多くの人に長く愛される、永く自然と共生できる建築を目指しています。

02私たちの美術館は、光と緑でできている。

館内に足を踏み入れた瞬間、まず皆さまを出迎えるのは美しい緑です。大きなガラス面に映る、雄大な小塚山の風景。つぎに、優しい光に包まれた空間を感じます。地下2階から地上2階まで、美術館の中心を貫いたアトリウムロビーは、つねに自然光が降り注いでいます。南側の壁一面に立つのは、高さ20mの「光壁」。それは、太陽の一日の動きによって陽の差し込み方が変化し、さまざまな光の表情を描く巨大なスクリーンです。光だけではなく、森の緑、空の青、風にそよぐ木の葉の影など、館内にいながら自然との一体感を味わえます。そして、夕暮れからは、まったく違う表情を見せます。壁に内蔵された光のチューブが点灯し、天に向かって伸びる竹のような光の柱が現れるのです。作品はもちろん、ポーラ美術館は、光と緑でできています。