ポーラ美術館コレクション選
会期
2023年12月13日(水)~2024年5月19日(日)
会場
展示室3
西洋絵画 印象派から20世紀前半のフランス絵画
ポーラ美術館の西洋絵画のコレクションには、19世紀後半から20世紀のフランスを中心とする西洋美術の歴史がたどれる主要な作家の重要な作品が数多く含まれています。
19世紀の印象派のクロード・モネ、ベルト・モリゾらは、明るい色彩と素早い筆遣いによって光をとらえた絵画を描きました。新印象派のジョルジュ・スーラは、光学や色彩学の理論を援用して明るい色彩による点描を用いた絵画を制作しています。さらに19世紀末にはフィンセント・ファン・ゴッホやポール・セザンヌなど、ポスト印象派の画家たちが独自の色彩と造形の探究を進め、20世紀初頭にはアンリ・マティスやパブロ・ピカソが自由で多様な芸術を切り拓いていきました。
レオナール・フジタ ― 「乳白色の肌」の秘密
レオナール・フジタ(藤田嗣治)の到達点である「乳白色の肌」は、和紙の白さをそのまま肌の表現とする浮世絵の手法を参考に、カンヴァスの全面に白の油性塗料を塗り、その上に繊細な黒の輪郭線や柔らかな陰影を施して女性の肌を表したものです。そのカンヴァスは、シャツなどに使われる目の細かい布を張った手製のものであり、白い下地塗料にはタルク(あるいはタルクを含むシッカロール)を混ぜ、あるいはその塗料の表面にタルクをまぶすことで滑らかで温もりのある乳白色が生まれ、芸術の都パリの美術愛好家たちを熱狂させたフジタ独自の表現が完成しました。
面相筆と墨を用いて施した輪郭線について、フジタは次のように記しています。「線とは、たんに外廓を言うのではなく、物体の核心から探求されるべきものである。美術家は物体を深く凝視し、的確の線を捉えなければならない。そのことが分かるようになるには、美の真髄を極めるだけの鍛錬を必要とする」(藤田嗣治「線の妙味」『随筆集 地を泳ぐ』講談社、1984年)。 すなわち、面相筆による繊細な墨線は、フジタが裸婦の美の真髄に到達するために必要不可欠なものだったのです。
本コーナーでは、フジタによって1920年代に確立された「乳白色の肌」の目的と表現手法の関係性についてあらためて考察します。