ポーラ美術館の名作絵画
会期
2022年9月14日(水)~2023年1月15日(日)
会場
展示室2
西洋近代絵画
印象派から20世紀前半のフランス絵画
ポーラ美術館の西洋絵画のコレクションには、19世紀後半から20世紀のフランスを中心とする西洋美術の歴史がたどれる主要な作家の重要な作品が数多く含まれています。
19世紀の印象派のモリゾ、ルノワール、モネらは、明るい色彩と素早い筆遣いによって光をとらえた絵画を描きました。新印象派のスーラは、光学や色彩学の理論を援用して明るい色彩による点描を用いた絵画を制作しています。明るい色彩と点描を引き継いだマティスやヴラマンクは、さらに大胆なタッチと色彩を用いて20世紀初頭にフォーヴィスム(野獣派)と呼ばれるようになります。その後、色彩ばかりでなくかたちをめぐるさまざまな探究が行われました。20世紀前半のドローネーやレジェはキュビスムの影響をとどめた作品を制作しています。また、ピカソとともにキュビスムを生み出し、静物を主題として触覚に基づくかたちと絵画空間の構築を探究したブラックの絵画をご覧いただきます。
戦後の絵画
抽象表現主義とアンフォルメル
第二次世界大戦後の約10年間は、世界のアートシーンでは抽象絵画の運動が盛んになります。この抽象への指向は、とりわけアメリカでは「抽象表現主義」と呼ばれ、フランスを中心とするヨーロッパでは「アンフォルメル」と呼ばれました。第二次世界大戦で戦禍を被ったヨーロッパを離れ、アメリカに渡った芸術家たちには、シュルレアリスム、抽象絵画、バウハウスなどの美術家、建築家、デザイナーらが数多く含まれ、彼らはおもにニューヨークに亡命し、創作活動をはじめます。なかでも抽象表現主義の絵画は、巨大なカンヴァスを使用し画面全体を抽象的な形象で覆う「オール・オーヴァー」と称される構成を特徴とし、水滴のように絵具を落とす技法「ドロッピング」や絵具をしたたらせて線状に描く技法「ポアリング」を駆使して作家のアクション(行為)を強調する「アクション・ペインティング」が衆目を集めました。
一方、アンフォルメルは「非定形なもの」という意味です。この言葉は、フランスの批評家ミシェル・タピエによって1950年に名付けられ、この運動の中心となった芸術家たちは、これまでの美学を棄て「もう一つの芸術」を創ろうとしました。つまりこれまでの抽象が与えてきた構成的、幾何学的なイメージを脱却し、理性では把えられない意識下の心の状態から生み出されるものを表現しようとしたのです。それらは抒情的で非幾何学的であるがゆえに、アンフォルメルと呼ばれました。タピエは、日本で同時多発的に生まれたアーティスト・グループ「具体美術協会」の活動を日本版アンフォルメルとして海外に紹介し、フランス発の抽象画ブームが世界中に広まっていることをアピールしました。