この書簡は、親しく交流していたコレクタ一のモーリス・ガンニャの夫人に宛てられたものです。
1914 年に火蓋の切られた第一次世界大戦は、カーニュでのルノワールの生活にも暗い影を投げかけました。長男ピエールと次男のジャンも戦地に駆り出され、ビ工ールは腕を、ジャンは脚に重傷を負ってしまいます。手紙には妻アリーヌがピエールの見舞いに赴いたことが書かれていますが、旅先で糖尿病を悪化させたアリーヌは翌 1915 年に二ースで亡くなり、ルノワールはさらなる悲劇に見舞われることになります。
文面には、戦下の状況に対する醒めたまなざしとともに、相手を励ます言葉もみられ、ルノワールの人柄をうかがい知ることができます。