ルノワールは、小さなカンヴァスに風景の概略を描きとめた油彩スケッチを、生涯を通じて多数残しています。シャルル・グレールの画塾で身につけたと思われるこの手法は、陽光の下で生き生きと眼に映る風景を描き出す印象派のスタイルをもたらした後も、画家の制作の端緒をなすプロセスとして位置づけられていたようです。
本作品の裏面には、"Essoye 1900"との書き込み(Essoyesの誤りか)がみられ、1885年以降、夏の時期を中心にしばしば滞在したエッソワにて、1900年頃に手がけられた可能性を示しています。また、ここにみられる緑色については、光学調査により、1890年を境にルノワールが用いなくなったとされるエメラルドグリーンではないことが確認されています。したがって本作品は1890年以降、つまり画業の後半期に制作されたものと考えられます。