室内で頬杖をつく女性像が描かれているが、パターン化された装飾文様はみられず、壁や窓枠、そして女の服を彩る青を基調に、カーテンや机にみられる黄やオレンジが相補的に配されている。また、窓枠や机などの作り出す直線の効果を緩和するかのように、女の背後に葉を広げる植物が描きこまれている点でも、相異なる要素による画面の均衡が図られている。さらに異質な要素として画面上で統合されているのが、窓を境とした室内と屋外である。室内に多用されている青は、色調を異にしながらも、窓を通して覗くニースの空と海の描写にも用いられている。色彩による両者の連続は、その境となる窓枠にもうかがえ、内側の枠に沿って外側に、もうひとつの枠が色調を変えて描かれている。女が肘をつく卓上に、屋外を彩る青の斑紋が複数おかれているのも、窓の内と外との連続を表しているのであろう。マティスにとって、室内は物理的に閉じられた空間ではなく、色彩によってその外に開かれ、連続する可変的な空間であった。モデルとして描かれているのは、1930年代からモデル兼助手を務め始めたリディア・デレクトルスカヤであると考えられる。