この人物群像は、逆立ちする人と母子像で構成されています。母子像は体の大小の違いが強調され、倒立する人物像の体は積み木のように組み合わせられています。手であり足であるような肢体は、腕と足の位置が入れ替わる倒立回転のシークエンスを暗示し、人物像に軽業師のような不思議な動力を吹き込んでいます。1950年代、ピカソは恋人フランソワーズ・ジローとの間に生まれたクロードとパロマと生活し、彼らが遊びに熱中する姿をつぶさに観察して、子どものような視点を貪欲に創作に取り入れました。子どもと一緒になって広告の紙や木片など身近な品々で人型や動物型の遊び道具を工作することと、彫刻のプロジェクトのための模型を作ることには、いささかも違わなかったのです。子どものような素直な感覚を生かし、既成概念にとらわれず創作に向かう自由な意識を獲得することこそ、80歳を迎えようとしていたこの頃のピカソの関心事でした。