ゴーガンは、幼少期をペルーで過ごし、船員生活を経験し、カリブ海に浮かぶ小アンティル諸島のマルティニク島にしばらく滞在している。アルルでのゴッホとの悲劇的な共同生活の後、ゴーガンは西欧の近代化の波のおよばない、文明化されていない世界に憧れを抱き、南国に向かう決意を固める。本作品は、おそらくタヒチに渡る1891年以前に、1889年のパリ万国博覧会に展示されていた東洋や中東の美術に影響を受けてゴーガンが創り上げた創造の南国の風景である。ゴーガンは、エデンの園を自分がこれから向かう南国として表現し、エヴァの容貌を母アリーヌの写真にもとづいて描いている。(『モネと画家たちの旅』図録、2007年)