レースの帽子の質感や軽やかさを伝える筆致からは、ルノワールの描く喜びが感じ取れるようです。袖口のヴォリュームが巧みに表現されたドレスの描写にもうかがえるように、ルノワールは衣装の質感をとらえて描き出すことを得意としていました。これには、仕立屋とお針子を父母にもつ生い立ちが関係していたのかもしれません。白いレースの帽子の清々しさは、夢見るような表情を浮かべた少女の甘美な魅力を引きたてています。ルノワールは、自らの選んだ帽子や衣装をモデルに提供することもあったようです。女性像にいっそう活き活きとした魅力をもたらすうえで、帽子をはじめとするファッションは、ルノワールにとってきわめて重要なものだったのです。