透明ガラスに青と白の色ガラスをまぶして斑紋を作り、その表面にデザイン化した蜘蛛の巣を線刻している。楕円と方形と合わせた器体の左右に、アプリカシオン技法で熔着した黄色い蜘蛛をあしらっている。白いガラスで作った蜘蛛の脚は、いかにも折れそうで危なげだ。このようなきわどり造形は、ドームには比較的珍しい。モティーフがややグロテスクな蜘蛛なので、コレクターに敬遠される傾向があって、わが国にもたらされた作例は決して多くない。ドームといえば、小奇麗な花瓶ばかりを作っていたイメージがあるが、このような意欲的な冒険もしていた。それがわかる貴重な資料といえる。(『名作選』 2007)