トリスタン島は、ブルターニュにある、フランス有数の漁港がある街ドゥアルヌネの湾内に浮かぶ小島。干潮時には陸続きとなる。ドゥアルヌネ湾はカンペールから北西30km、北をクロワゾン半島、南をシザン半島に囲まれたリアス式海岸の入り江。「ドゥアルヌネ」とは、ブルトン語で「その島の地」(Douar an enez)を意味し、トリスタン島に由来する。この島は『トリスタンとイゾルデ』の登場人物、トリスタンが仕えたおじのマルク王の別荘があった島と言われている。中世には小さな修道院が建てられ、16世紀には海賊の根城として使われた歴史がある。ブーダンが1855年にこの地を訪れて以来、多くの画家たちが滞在し、作品を制作している。本作品でブーダンは、トリスタン島の岩場とドゥアルヌネ湾岸の風景を描いている。エメラルド色がかった青い海と空を分かつ陸地には、朝の光を受けた教会の尖塔や家々、灯台などの建物が細かく描きこまれている。(『モネと画家たちの旅』図録、2007)