1881 年の 2 月末、ルノワールはアルジェリアへの一度目の旅に赴いています。その滞在中に制作されたと考えられる本作品には、伝統的な衣装に身を包んだおそらく現地の人々 の、ロバに乗って海岸沿いを進む光景が描かれています。目を引くのは、彼方の街並みから棕櫚(ルビ:しゅろ)を思わせる南方の植物にいたるまで、随所に施されたハイライトです。ルノワールは後年、アルジェリア旅行の成果として「白の発見」を挙げ、事物の姿を一変させる「太陽の魔力」に言及しています。現地で日常にみられる光景が輝きを帯びて描き出された本作品は、ルノワールのアルジェリア体験を物語る作例といえます。