裸婦の頭にターバンが巻かれていることから、本作品は、1917年に始まる第一次ニース滞在期に集中して描かれたオダリスクを主題とする作品のひとつに位置づけることができる。描かれている場所はおそらく、この時期にアトリエとしていたニースのシャルル・フェリックス広場1番地のアパートと考えられる。マティスは1906年にアルジェリアを、1911年とその翌年の二度にわたりモロッコを訪れた際に、中東風の調度品に多大な関心を示して購入しているのに加え、パリのギャルリー・ラファイエットなどのデパートでも買い求めていたという。しかし、本作品にそれらはほとんど描かれておらず、裸婦を取り巻く室内空間は、シーツと背景の壁がそれぞれ白と赤の大きな色面へと処理され、簡潔な画面が作り出されている。代わりにここでは、画面の中心を堂々と占める裸婦の身体表現が主眼とされているといえよう。陰影を帯びるモデルの肌は、周囲の調度と同様に、長い筆致を連ねて描かれており、装飾を抑え、モティーフを限定した画面に統一感がもたらされている。マティスは後年、出版者のテリアードとの対話において、室内で裸婦を描くためにオダリスクの主題を採ったことを言明している。 オダリスクに扮しているのは、制作の前年からモデルを務め始めたアンリエット・ダリカレールと考えられる。