舟遊びの主題、画面端で切断されたボート、誇張されたオール、俯瞰的な視点は、日本の浮世絵を思い起こさせます。また、舟に乗っている女性は、モネが再婚したアリス・オシュデの4人の娘のうちの2人、シュザンヌとブランシュであると思われます。モネは、1880年代後半から1890年にかけて、エプト川での舟遊びの情景を描いています。なかでもこの作品は、モネの人物画の最後の大作であるとともに、水面下の水草の動きと神秘的な暗い光を描いた最初の試みでもあります。モネはこの作品を描いていた当時、友人に宛てて次のように書き送っています。「私は不可能なことに取り組みました。水とその底で揺らめく水草をいっしょに描くということで、それは眺める分には素晴らしいのですが、このように描こうとすると気が狂いそうになります」。モネはこのときから水面の下の世界に眼を向けるようになり、その試みは晩年の「睡蓮」連作の水の風景でも展開されていきます。