パリから約10kmのシャトゥーは、セーヌ河畔の町。1837年にパリと鉄道で結ばれて以来、舟遊びで知られる行楽地となり、飲食店やダンス・ホールが激増した。カフェ・レストラン「ラ・メゾン・フルネーズ」には、小説家モーパッサン、≪舟遊びの昼食≫(1881、フィリップス・コレクション蔵)を描いたルノワールやモネも訪れている。ヴラマンクは、1900年からこの地に住んでいたが、すでにその頃には、王子の華やかさは失われていた。ヴラマンクは、1900年にパリからシャトゥーに戻る列車のなかで出会ったドランと、廃屋になっていたレストランを借り共同アトリエを構えてともに制作、フォーヴィスムにおける「シャトゥー派」が形成された。セーヌ河畔の赤い屋根の家々を囲む画面左右の木々やセーヌ河の水面は、赤、緑、青、白などの鮮烈な色彩と大胆な筆致で描かれ、輝くような美しさと力強さを湛えた作品に仕上がっている。(『モネと画家たちの旅』図録、2007)