カーニュ=シュル=メールで本作品が制作された1905 年、ルノワールは町の中心部の郵便局の建物に居を置いていました。その名も「メゾン・ド・ラ・ポスト」と呼ばれたこの建物は、家主と郵便局長、そしてルノワール一家が暮らすアパルトマンを兼ねるほど大きかったようで、ルノワールの住まいは裏手の広いオレンジ畑に面していました。
ルノワールが「メゾン・ド・ラ・ポスト」の近辺を描いた作品は数点残されていますが、本作品もその一点と考えられます。画面の中央を走る道には、連れ立って歩くふたりの人物の姿が描きこまれており、南フランスの日常の穏やかな空気を、さりげなく伝えています。