この作品に描かれたグランド・ジャット島とは、パリの北西1.5km、ブーローニュの森の北、ヌイイとルヴァロワにまたがって位置する、セーヌ河に浮かぶ細長く全長約2kmと200mの二つからなる中州のことです。スーラの《グランド・ジャット島の日曜日の午後》(1884-1886年、シカゴ・アート・インスティテュート蔵)でも有名な、19世紀半ば以降、舟遊びなどで人気のある行楽地でした。モネは、この行楽地の風景を、島の西端から見て描いています。曲がりくねった島の周囲の散歩道と暗い色彩で描かれた点景の人物たちは、いずれも奥行を表わしており、画面中央には、アニエールの鉄橋とクリシーの工場の煙突と灰色の煙が見えます。のどかな田園と産業化の要素の対比は、モネが1870年代後半によく用いた手法であり、この作品は、フランスの19世紀後半の社会と風景の変化の記録といえます。