大きな波をたてながら海原を進む2艘の船。青空を覆う厚い雲、さまざまな色彩で描かれた断崖は、幻想的な雰囲気を醸し出している。ルドンは晩年に帆船の主題を描いている。本作品にみられる帆船には、光輪をいただく人物たちも乗っている。これらの人物たちが誰であるかは定かではないが、聖書外典の『黄金伝説』に含まれる、プロヴァンスの伝説との関係が指摘される。それは、キリストの昇天の後、マグダラのマリア、姉のマルタ、二人の兄弟のラザロが、天使の導きでマルセイユに到着し、この地の異教徒たちにマリアが布教したというものである。(『モネと画家たちのパリ』図録、2007)