華やかなバラ色に満ちた空間のなかで、優雅な曲線でかたどられたギターやグラス、果物などが円形のテーブルに置かれている。透明感のあるバラ色の色彩は、儚く夢のような雰囲気を伝えるが、実際には油絵具に砂が混ぜられており、重厚で温かみのある絵肌を作り出している。本作品の特徴となるバラ色は、1930年以降になって再びブラックのパレットに加えられ、キュビスム時代の極めて限定された色彩から、豊かな色彩表現へといたる転換期に使用された。また本作品は、色彩だけでなくキュビスム時代の形態を多面体としてとらえる厳密さや、《果物のある静物》のように対象を極度にクローズアップした空間からも脱して、広がりとゆとりを感じさせる。複数のモティーフが広い空間のなかでゆるやかに響きあう様は、この後ブラックの重要な主題となる室内画への展開を予感させる。 ブラックは1933年から1938年にかけて、本作品と同じ円卓を描いた作品を残している。それらは黄や青色といったさまざまなテーブルクロスの色によって題名がつけられている。そのなかの1点《黄色のテーブルクロス》は1937年にカーネギー国際美術大賞を受賞し、画家は国際的な名声を獲得した。同時期に制作され、同じ円卓を描いた本作品もブラックの円熟期に描かれた1点といえるだろう。(『ピカソ 5つのテーマ』図録、2006)