12月2日(月)~13日(金)まで臨時休館いたします
茜色の空を映す道はカーブをなして彼方まで続き、低い丘陵地帯は薄暗くシルエットで浮かび上がっている。この道の上に突然現れた花器と花。細い花器には蔓と葉が彫刻され、そこに芥子の花が生けられている。画面右手から強い光が当たっているのであろうか、花器と花の影は道を横切るようにまっすぐ伸び、影の反対側には二枚の花弁が道の上に落ちている。道幅と花器の大きさの比率からしても、現実とは思えない構成であり、その唐突さは北脇昇らを中心とする日本のシュルレアリスムの洋画家たちが1930年代に試みた不条理な風景の絵画化に通じるだろう。 さらに本作品では花器と花が主役にみえるが、タイトルは「道」となっており、画家が道に寄せる強い思いが垣間見える。髙山は道についてたびたび語っているが、彼は誰もいない道にも、そこを歩いてきた人の営みを感じ取っている。「どんなところの道でも、歴史が感じられます。子供が遊んでいる道。近くの奥さんが買い物に通う道。どんな道にも、それぞれの歴史がにじんでいます。」(「絵を読む」(対談、髙山辰雄・鈴木進)<墨の心>『形象』19号、1974年4月)