すいかを食べる男と山羊

  • 作家名 パブロ・ピカソ
  • 制作年 1967年
  • 技法・素材 油彩/カンヴァス
  • サイズ 114.0 x 146.1 cm
ピカソは晩年に向かい、男性と女性、画家とモデル、老人と若者、人間と動物などの相反するモティーフを対比的に並べる傾向が顕著となります。それらは神話や寓話、画家の記憶から抽出されて偶然のままに組み合わされていますが、そこに共通するのは、人間の原初的な欲求―食欲や性欲を満たそうとする、野性的なグロテスクと無垢のイメージです。メロン、あるいはスイカを食べる少年は、スペイン絵画の伝統において、キリスト教的な慈悲の対象となる、貧しくも無垢で生命力に溢れる人間像を示しています。草原に座り込みすいかを頬張る少年と山羊を大胆に組み合わせたこの作品は、ピカソがスペインの農村で知った牧歌的な暮らしを想起させます。また山羊はピカソの生活に身近な動物で、南仏のラ・カリフォルニー荘ではペットとして可愛がられた家畜でした。ピカソは、絵の中の少年に、ペットの山羊「エスメラルダ」の傍らで遊ぶクロードら孫たちの屈託のない姿か、もしくは自らの少年時代を重ねているのかもしれません。