ドイツ人の画家オットー・フォン・ヴェッチェンと結婚したローランサンは、第一次大戦の影響により、スペインとドイツでの亡命生活を余儀なくされた。7年におよぶ亡命期間には、暗鬱で翳りの漂う作風で制作をおこなっていたが、パリに戻ってからは、明るく華やかな色彩と、おだやかな表情が特徴的な女性像を多く描くようになった。バラ色や黄色の衣装を身にまとった女性たちが、あたかも森の中にいるかのように描かれた作品は、1920年代前半に多くみられる。この緑の舞台に関しては、亡命中に出あったドイツ表現主義の画家たちの作品、とくに「ブラウエ・ライター」(青騎士)の主要なメンバーであったアウグスト・マッケ(1887-1914)の作品からの影響が指摘されている。本作品でも深みのある緑を背景に、淡いバラ色、青、黄色そして肌の白が対比的に配され、あざやかな色彩のハーモニーが奏でられている。画面中央に描かれた、こちらを振り返る女性と、その脇に座ってけだるい視線を投げかける女性の姿は、舞台劇の一場面を描いたかのような物語性を漂わせている。