ろうそくのある静物

  • 作家名 パブロ・ピカソ
  • 制作年 1944年
  • 技法・素材 油彩/カンヴァス
  • サイズ 64.6 x 91.8 cm
ピカソは第二次世界大戦中、首都パリがドイツ軍に占領されてもなお、アメリカとメキシコからの亡命の誘いを断り、フランスに留まっていました。パリ6区にあるグラン・ゾギュスタン通りのアトリエに住まいを移し、画商や友人たちとの交流の拠点としましたが、ナチの統制は前衛画家ピカソを脅かし、作品の公開は禁じられていました。この作品は「ノクテュルヌ」(夜景画)とよばれる、ろうそくの火が室内の夜の闇を照らす静物画のシリーズの一つで、戦時下のピカソの重要な主題でした。「ノクテュルヌ」のシリーズのなかでも、本作品は例外的にろうそくが灯されておらず、白々とした空気がかえって各モティーフの存在を闇に隠すことなく剥き出しにしています。注ぎ口が強調されたコーヒーポットと周辺の静物の間には、主と従、あるいは強者と弱者の関係が認められますが、一方ですべての物―燭台、コーヒーポット、果物、コーヒーカップ、ソーサー、グラスは、力強く引かれた黒い輪郭線で繋げられ、テーブルの上で、奇妙な連帯感が生み出されています。