12月2日(月)~13日(金)まで臨時休館いたします
緑色の花器に生けられた赤と白の芥子の花、その間にはミモザの花も見える。背景は濃い青の階調で塗りこめられ、手前から奥へと向かって続く曲がりくねった道が見える。夜の帳が下りたところなのであろうか、暗く沈んだ背景から、明るい色の花々は光を放つように浮かび上がってくる。花器や花は現実に存在しそうなモティーフであるが、背景はルネサンス絵画にあるような、郷愁をさそう心象風景に見える。こうした、風景画のなかに唐突ともいえる状態で花などの静物が登場する構図は、《道》(cat. no. 28)にもみられるように髙山辰雄がしばしば取り上げたものである。そこに描かれる道に一直線のものはなく、どれもねじれ曲がっている。画家は独自の世界観について次のように語る。「私はこのねじれ曲る世界をどうしても絵に描いてみたいと思うのです。それは言葉にならぬ言葉、絵にはならない場面なのです。」(髙山辰雄「動く風景、走り去るものをみつめて」『芸術新潮』11巻1号、1960年1月)