ピラミッド型に隆起するテーブルに水差しと果物皿が置かれ、その他は壁に掛けられていると思われる額縁だけがあります。静物のモティーフは、ピカソの作品中しばしば一対で表わされますが、ここでは水差しと果物皿のどちらも丸みが強調され、互いが求め合いながらも反発し合うような緊張感と弾力性に溢れています。静物でありながら、人間の身体を連想させるのです。ピカソの静物を身体のメタファーとして解釈するならば、水差しは男性を示し、丸い果実を戴く果物皿は女性の身体といえるでしょう。親密でありながら拮抗する二つの静物の関係を、青と白の曖昧な背景が優しく包んでいます。ピカソは1936年の秋以降、パリ郊外ヴェルサイユ近くのル・トランブレ=シュル=モルドルにある建物を入手し、恋人マリー=テレーズと、ふたりの間に生まれた娘マヤを住まわせ、穏やかな生活を享受しながら数点の静物を手がけました。本作品もそのうちの一点と思われます。