1932年のラリック・カタログに所収。そこには、「ドガ」と記載されている。
その題名の通り、エドガー・ドガ(1834-1917)に触発されて製作した容器で、蓋にはウェーブヘアの踊り子のポーズが描写され、ドガの踊りこの作品を髣髴とさせる。
ラリックの香水瓶や化粧セットの重要なデザインテーマに女性があげられる。それらには神話など古典から題材をとっているものもあるが、この作品のように写実的な踊り子を通して身体、髪、手、脚など同時代の女性の魅力的な要素をとらえた作品もある。
この作品は、ラリックがガラスの世界で表現し得た女性美と、ドガの踊り子への愛情あふれる表現が重なって、女性賛美のかたちとして結実したものといえよう。(『ドガ、ダリ、シャガールのバレエ』図録、2006)