杉山寧は1981年(昭和56年)、72歳にして二度目のトルコ旅行に赴き、この地を主題に取材した作品を多く制作しました。昼間から月の浮かぶ真っ青な空を背景に、スフィンクスが堂々とした姿を見せています。この巨大な遺跡を下から仰ぎ見たときに、抜けるような青空との色彩の対比に画家は目を見張ったのでしょう。ここに描かれているのは、アラジャホユックのスフィンクス門であり、今日ではボアズカレとして知られているハトゥシャシュから北に30キロの距離にある遺跡です。スフィンクスを形づくる砂岩のザラザラとした質感は、無数の色の点描で表わされ、まぶしい日の光をあざやかに反映しています。