12月2日(月)~13日(金)まで臨時休館いたします
アポリネールと第一次大戦の塹壕で共に過ごした戦友たちが、その48周年目の記念に出版した詩画集。第一次大戦中、ジョルジュ・ブラックはアポリネールとは異なる部隊に所属していたが、詩人と同様に戦地で頭部に銃弾を受けて生死の境をさまよった。詩人は被弾の2年後にこの世を去るのだが、80歳にさしかかろうとしていたブラックは、親友の詩人とのかつての共通体験を詩と画で謳いあげるべく、アポリネールが戦地で恋人ルーに贈った詩「彼方でぼくが死んだら」を表題に選んでいる。晩年のブラックは病と闘いながら、詩人ルネ・シャール、サン=ジョン・ペルスらレジスタントの詩人と交流し、詩画集の制作に精力的に取り組んでいた。アポリネールが純粋で「天使のような画家」と評したブラックは、本作品で詩人のほとばしる情熱的な言葉から美、愛、生命、宇宙に関する壮大なイメージを掴み、単純かつ根源的な色と形を抽出している。砲弾の閃光を思わせる鋭い直線による構成と、鳥という第二次大戦後のブラックの絵画に現われる平和を象徴するおだやかなモティーフには、死への恐怖と緊張と、その深淵からの解放が見られるだろう。ギリシア風の横顔は、月桂樹の冠を戴いたアポロン、すなわちアポリネールの像をなぞっていると思われる。
(『アンリ・ルソー:パリの空の下で』図録、2010年)