著作権有効作品のため、画像を表示していません。画像は『シャガール 私の物語』展図録(p. 98-107、cat. 26)をご覧ください。
『ダフニスとクロエ』はエーゲ海に浮かぶ神々の島のひとつ、自然豊かなレスボス島を舞台に繰り広げられる少年ダフニスと少女クロエの恋の物語。古代ギリシアの作家ロンゴスにより、神々や妖精たちの守護のもと、初恋を大人の愛へと成就させていく純真なふたりの成長が、抒情豊かに綴られている。シャガールは習得したばかりのカラー・リトグラフの絢爛たる色彩の効果を最大限に生かし、ダフニスとクロエが生を受けた牧歌的な田園風景、四季の移り変わり、ニンフたちの棲む神秘的な洞窟、不思議な夢の出来事、恋敵の策略、海賊の襲撃、近隣の村との諍い、婚礼の祝宴までの42場面を描写している。
第二次大戦後、フランスに戻ったシャガールは、レスボス島出身の出版者テリアードから『ダフニスとクロエ』の挿絵本制作の依頼を受け、ギリシアを二度にわたり取材している。ギリシア世界の神話的な輝きを表現するために、本作品にはリトグラフとしては例外的に20色以上もの色彩が用いられ、完成には4年以上の歳月が費やされた。(『シャガール 私の物語』図録、2008)