1905年以降、ルドンは「アポロンの馬車」の主題を油彩やパステルで繰り返し描いている。この主題はロマン主義の画家ドラクロワが、ルーヴル美術館の「アポロンの間」の天井画に描いており、ドラクロワを尊敬していたルドンはそれを見て深く感動した。アポロンはオリュンポスの十二神の一人で、後に凱旋車で天空を翔ける太陽神ヘリオスと同一視された。やわらかな色彩で表現された、雲が立ち込める天空の帯(並列4頭立ての馬車)が駆けて行く。馬たちは荒々しい様子で、アポロンが乗った小さな馬車を引いている。太陽神だけがその激しさを御することができる4頭の馬と馬車は、平和や自由の象徴とされている。(『モネと画家たちの旅』図録、2007)