マルケは建物のバルコニーから、アルジェ湾の青い海を望む風景を描いている。画面左に見える豊かな緑の木々は、アルジェ湾より少し離れたテレムリにあるホテル・サン=ジョルジュの庭である。画面左の丘の上には、戦いで歿したアフリカの兵士たちのために1912年に建てられた記念柱(1939年消失)が見える。マルケは、1940年の6月初めに、第二次大戦の混乱と危険を避けるためと、芸術家、知識人たちのナチスへの抵抗のポスターに署名することを承諾したことにより、パリを離れてアルジェに避難し、1945年まで滞在した。戦後はフランスに帰国し、パリ郊外ラ・フレットに住み、セーヌ河の風景を数多く描いた。(『モネと画家たちの旅』図録、2007)