この《アンヴァリッドへの道》は、セーヌ河右岸、クレマンソー広場からアレクサンドル3世橋を正面に望み、左岸のアンヴァリッド(廃兵院)へと続く通りを描いた作品である。この道は賑やかなシャン=ゼリゼ通りへと続いており、当時最新の自動車が行き交っていた。 アレクサンドル3世橋は、1900年のパリ万国博覧会の際、会場のセーヌ河右岸への拡張のために建造された石造りの橋で、唯一のアーチで支えられ、四隅に黄金に輝く彫像と角灯が配されたパリでもっとも幅が広く、もっとも壮麗な橋として知られている。画面右には同じく1900年の万博の際に建造されたバロック様式のグラン・パレ、そして左にプティ・パレが描かれている。万博の際には、セーヌ河の両河岸にはトロカデロ宮殿からアンヴァリッドまで世界各国のパヴィリオンが軒を連ね、あたかも世界全体を見渡すような壮観を呈していたという。ヴァン・ドンゲンは、かつて世界が再現された万博の跡地の風景を正面に据え、左右対称の構図で描くことにより、この風景の広がりを強調している。