本作品は、女性像の輪郭を弦楽器やトランプなどの静物画のモティーフとを組み合わせた、ピカソのキュビスム時代の肖像画です。本作品のモデルは恋人エヴァ・グエル。ギター、マンドリン、ヴァイオリンなどの弦楽器は、絵画・彫刻のジャンルを問わず、この時代のピカソと友人の画家ブラックの主要なモティーフでした。ピカソは、女性の身体のメタファーである弦楽器の優美なシルエットを活かして顔の輪郭とし、まるいつぶらな瞳や、肉感的な上唇と瞳を加えています。唇が反転しているのは、偶然の戯れでしょう。また、木の板が重ねられたような頭部の周りに、ゆるやかなウェーヴの髪や、帽子の網目、毛皮が模された、さまざまな質感の装飾的な部分を配しています。ピカソは前年の1912年から、絵画のなかに新聞紙や壁紙などを組み込んだパピエ・コレ(貼り紙)の技法を取り入れています。これは、概念的、視覚的、さらに触覚的な感覚を混在させた、「総合的キュビスム」の始まりでした。