サン=マメスは、モレ=シュル=ロワンの北、セーヌ河とロワン河の合流地点にある。シスレーは1880-1882年にヴヌー=ナドンに住み、その後、1882年9月には穏やかな流れのロワン河畔の村モレ=シュル=ロワンに移り住んだ。聖マメスの聖衣と遺骨の一部を納めた協会に由来する名を持つサン=マメスは、河川輸送の要衝の地であり、「船頭の村」として知られた。シスレーは晩年、この地を中心に作品を制作した。水平線を画面の中央より低く置き、すばやい筆致で雲の動きや明るく照らされた河岸の草むらをとらえた本作品は、戸外制作の際にシスレーが感じた光や風の感覚を鮮明に伝えている。(『モネと画家たちの旅』図録、2007)